飼い猫と、番犬。【完結】



それから少しして。


隊内に目に見えぬ大きなしこりを残したまま、笑顔の参謀殿は新井忠雄と共に九州の地へと遊説とやらに旅立った。


講釈やら色目やらで味方を増やし隊を分けた伊東を、常々厄介払いしたがっていた副長は、これ幸いと二つ返事でそれを了承した。


島原居座りでのこともあり、この頃合いで動きを見せた彼が何かを企んでいるのは明白だ。


俺に与えられた役目は伊東の居ぬ間の隊内の動きを見張ること。


暫くは完全に諸士調役から離れて監察の任一本になった俺。勿論以前に増して中がよく見えた。


そして、春。


暖かな陽が川の水面を輝かせ、満開を僅かに過ぎた桜が春の風にその花弁を散らしたとある日。


遊説から戻った伊東は案の定すぐに新選組からの分離を願い出た。


幕臣ではなくただ勤王一筋に尽くしたいという彼の訴えは、元々尊皇だった局長も強く反対は出来なかったらしい。


分離後も新選組の為に尽力する──そんな表面的には友好的な誓いを交わし、彼等は朝廷から賜った御陵衛士という名を掲げてこの新選組から抜けることになった。


それは、彼等の帰屯から十日も経たない短い間でのことだった。










「……なぁ、向こうで沖田が探しとったで?」
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