飼い猫と、番犬。【完結】
すると土方副長はぴくりと眉を動かして息を吐き、近くの煙管に手を伸ばした。
「他の奴には仕事だと言ってあるが俺はお前が此処にいるのを知ってっからな、あいつのしかめっ面見りゃ何となくわかる」
まぁせやろな。
見せつける意味もあって、あえて目立つ場所に噛み付いてやったのだから。
だが、こうして確認してくるあたり、詳細は聞いていないのだろう。
落ち着いているのかそう見せかけようとしているだけなのか。ゆったりと紫煙を吐く副長からはやはり感情は読めない。
けれどつっこむなら今しかない。
「いやぁ向こうさんから部屋来はったさかい、かいらしてつい」
「監察が風紀を乱してどうする」
「けど別にうち色恋禁止やありませんやろ? 男色でも恋仲や思われとる方が虫除けにはなりますで? ……まぁでもあれですわ」
少しばかり煽ってみても副長は相変わらず淡々とした様子で、そこから崩すことは難しそうだ。
なら、と一度言葉を句切ると、他所を向いていた副長の視線がこっちを向く。
それに合わせて俺はそっと、笑みを深くした。
「皆さんの自制心には感服しますわ、普通あんな別嬪おんなじ部屋やったら堪らん思いますけどね」
彼らにはどこか遠慮のようなものが見える。そして恐らくその根本にあるのはこの二人の過去。
そこに触れることを躊躇っているが為に今の関係が成っているのだ。
──なんかあるやろ
穏やかな笑みでそう訴える俺に、副長は溶けゆく最後の一服をじっと見つめながら言った。
「……あいつは俺の、
元許嫁だ」