飼い猫と、番犬。【完結】


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丁度昼の巡察の時分。


屯所に残る非番の連中は鍛練に励む者もいれば、昼寝に勤しむ者、月代(サカヤキ:額から登頂部にかけての髪を剃った髪型)を剃り合う者と様々。


先程漸く目覚めた俺はそんな連中を横目に通り過ぎると、昼からの仕事の話で今、副長室にいる。


昼は皆思い思いに外で食事をとる為に、朝餉を食い損ねた俺はとりあえず腹ペコだ。



「──承知しました。ほなまた戻ったら来させてもらいます」


よし、飯や飯。


話が終われば気持ちは素早く外に向かう。


だが、いつもとは違う土方副長の空気に、そのまま立ち上がることは出来なかった。



「なにか?」

「……あれは、お前だろう?」


ああ。


普段余計な話をしない分、その低く問われた言葉の意味はすぐにわかった。


「どないした言うてはりました?」

「猫に引っ掛かれたんだとよ」

「またかいらしてええですね、それ」


きっとさらしでも巻いて隠しているんだろう。


鏡を見ながら眉間に皺を刻んでいる姿が目に浮かんで、ぷっと小さく笑いが溢れる。


勿論知らないふりをしてやり過ごすことも出来た。


だが、初めてあれに対して普段と異なる反応を見せたこの人の内を知る良い機会だ。これを逃す手はない。


頬を緩ませたまま外した視線をもう一度副長に戻すと、少々白々しく首を傾げた。



「何でまた俺やと?」
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