初恋は一言から
バンッという音とともに入る。

「誰だ」

この声は……分からん。

聞き覚えのある声だ。

「ごめんごめん〜怒んないで!」

おちゃらけた感じで真輝音先輩が言う。

芹先輩は無言。

そろそろあたしも切り替えるか。

ゆっくり歩きながら深呼吸。

目を閉じて頭の中を空っぽにする。

そして心の中で呼びかける。

『おいで』

するとスーッと何かが憑依してくるような感覚。

と同時にあたしの意識が切り替わる。

あ、言い忘れたけど安心してね。

元のあたしの意識はちゃんと覚醒したまんまだから。

そっと目を開け、部下を見渡す。

そっとため息をつき、言う。

「テメェら、訓練サボったな」

息をのむ音。

一瞬にして見抜かれたんだから無理もない。

「俺は、きちんとメニュー渡したよな。真輝音?」

「はい、お母さんを通じてもらっています」

「なのにこのザマか。……笑えねー」

「「申し訳ございません」」

幹部、真輝音と芹が頭を下げる。


「まあいい。今日から俺が来たから問題ない(黒笑)」

ゾゾッ。

背筋に寒気が走る音が聞こえた気がした。

「では諸君。今日の予定を教えてくれ」

「今日は…特に何もないです」

「ではなんで集まった?」

「それは…」

みんな目をそらす。

なんだか言いたくないみたいだ。

無理やり聞き出すのでもいいがめんどくさいのでやめておこう。

うん、それがいい。

「はぁ、しょうがない。で、これからの予定とかはたてているのか?」

「すみません。まだです」

芹が言う。

ほんと無計画な奴らだ。

よくこんなんで今までやってこれたものだ。
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