イジワルな先輩との甘い事情


「古川さん、どうもこのマンションを勝手に調べて周りをウロウロしてたみたいだったから、花奈の事も気付いてたんだと思う。
そう考えると、俺が下手に無碍に扱って気分を悪くさせたら花奈にも何か手を出す可能性があったから、余計に適当には扱えなかったんだ。
でも、古川さんと社外で会ったりしたのは部屋の案内の時だけだし、何も心配しなくていいから」

微笑む先輩に、「あ、はい」と頷いてから、そういえばとある事を思い出す。

「じゃあ、先週、水曜日も土曜日も都合悪いって言ってたのは……古川さんと予定があったからじゃなかったんですね……」

安心して呟くと、意外そうな顔をされて……顔をしかめられた。
少し怒っているようだった。

「違うよ。あれはただ風邪をひいてたから、花奈に移したら可哀想だと思って断っただけだったんだけど……まさかそんな風に思われてるとは思わなかった」

「え、あっ、だって……」と、そう思ってしまった経緯を説明しようとしたけれど、それを先輩が止める。

「まぁ、花奈はちゃんと付き合ってるとも思ってなかったんだから、不安になっても仕方ないよ。
でも……俺の言葉が足りなかったせいなのは分かってても、半年間ひとりで付き合ってるつもりだったと思うと……」

「今更だけど、虚しいかな」と、ふっと寂しそうに笑う先輩に、慌てて口を開く。

「ごめんなさいっ、私、先輩との関係ちゃんと確認しなくちゃってずっと思ってたけど、でも怖くて……。
都合いい女でいいからってお願いして受け入れてもらったのに、それ以上を望むなんて……わがままで嫌われるかもしれないって思うと、できなくて、それで……」

言った事は本当だけど、言えば言うほど言い訳みたいに思えて、言葉が続かなくなる。
そんな私を、先輩は優しく微笑んで「もういいよ」って許してくれた。

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