イジワルな先輩との甘い事情


「花奈に告白されておきながら、あの時ちゃんと気持ちを伝えなかった俺が悪いんだから。
今のはちょっと拗ねてみただけ」

にこりとした笑みで「ごめんね」と謝られて……拗ねるとか、なんて可愛いんだろうと思ったけど、その言葉を我慢して呑み込む。
可愛いとか言われるの、先輩嫌いそうだから言わない方がいいと思ったから。

私に気持ちを言葉にして伝えてくれなかったのだって、男が好きだとかあまり口にするものじゃないって言ってたし、割と古風っていうか亭主関白みたいなところがあるのかもしれないし。
だけど……。
さっき不貞腐れてたのとか、松田と話していた時にムッと顔してたのとか考えるとやっぱり可愛くて、口の端がにやけてしまう。

こんなにカッコいいのに可愛いとか……本当にもう反則だ。

拳を口に押し当ててにやけた口を隠していると「花奈?」って、不思議そうな顔をした先輩に呼ばれてマズイと、別の会話を探す。
そして、さっき、曜日の話が出た時にふと疑問に思っていた事を思い出した。

「あの、先輩、会うのは水曜日と土曜日って決めたのは、なんでだったんですか?」

それを言われた時には、きちんと付き合えてるなんて思ってなかったから、他の曜日まで私に縛り付けちゃいけないし、その理由を聞いてもいけない気がしてたから気にしないようにしてた。

園ちゃんに、他の曜日は他の女と会ってるんじゃないのって言われた時はショックだったけど、でも、だとしても私に口を出す権利なんかないしって、やきもち焼きながらも我慢してた。



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