イジワルな先輩との甘い事情



「えー、でも別に柴崎、何かわがまま言っただとかそんなんじゃないんだろ?
なのになんで北澤さんが機嫌損ねんの?」

会社から、電車で三駅ほどのところにあるパンケーキ屋さんは、食べ放題だって言うのに店内は落ち着いた空気が流れていた。
どうやら予約制らしくて、一日に入れるお客さんの数は決まっているらしい。
好きな物をゆっくりと食べて欲しいっていうのがお店のコンセプトだって話は、ここに来るまでに園ちゃんに教えられた事だ。

時間制限がない分、3000円って結構いい値段するけど、でもお店に入ってみたら納得した。
レンガ調の、まるで小さな古城みたいな造りの外観と内装は、女の子なら誰もが気分を上げそうな可愛らしさだ。
案内されたテーブルはソファー席だったけど、一人掛けのソファーは白くて見るからにふわふわしていそうでいちいち可愛い。

天井から落ちるレースのカーテンがテーブル席を簡単な個室みたいにしているけど、天蓋みたいで思わず座るのを忘れて立ったまま眺めてしまった。
パンケーキがとにかくおいしいらしいって園ちゃんに言われて来たけど、雰囲気だけでも得した気分だった。

そんなお店には、男性のグループどころか、カップルさえもいなくて。
店内唯一の男性客となった松田も、最初は「うわー俺浮いてんなー」って困り顔だったけど、入店して十分が経った今はすっかり落ち着いたようだった。

いつも思うけど、松田の場に慣れるスピードってすごい。

甘い物は苦手だけど、パンケーキはパンだからいけるって、お皿に五段に重ねて持ってきたパンケーキを切りながら見てくる松田に、眉を寄せて答える。


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