イジワルな先輩との甘い事情
冬は嫌いじゃないけど、寒いのは得意じゃない。
そう考えて、北澤先輩もきっとそうだろうなぁと思うと少し気持ちが温かくなった。
こんな風に、先輩はきっとこうだろうなって予想できるくらい先輩を知れている事が嬉しくて。
「もう夜はだいぶ冷えるなー」
「うん」
帰路を急ぐサラリーマンやOLに追い越されながら、ふたりでゆっくりと歩く。
松田の歩く速度はゆっくりだから、私も急がなくてよくて気が楽だ。
これが、もしかして近々競歩のレースでも控えてる……?って聞きたくなるくらい早足の園ちゃん相手だとそうはいかないから。
北澤先輩とは部屋で会う事がほとんどだから、並んで歩いた事はあまりないけれど。
何度か一緒に歩いた時。歩調を私に合わせてくれてるのが分かって、それが嬉しかった。
外でも会ってみたいなぁと思わないわけじゃないけど……そこまで望むのは図々しい気がして言えていない。
だって、私の想いを知りながら断らずに会ってくれるだけでも嬉しいしありがたい事なんだから、外でデートなんて贅沢だ。
先輩は、水曜日と土曜日に私と会う時間を作ってくれる。
水曜日はノー残業デーだから、その帰りにお邪魔して、土曜日は午後からお邪魔するのがなんとなく暗黙の了解になっているんだけど……。
それを園ちゃんに言ったら『他の曜日は違う女よんでるとか? 曜日で女変えてるのかな』って、グサっとくるような意見を言われてちょっと傷ついた。
……でも、もし本当にそうだとしても、私には口出しする権利なんてないのだから、考えたところでしょうがないのだけど。