イジワルな先輩との甘い事情


「なんか、その勝負の意味よく分かんなくね?」

会社からの帰り道。
たまたま一緒になった松田と話しながら駅までの道を歩く。

「そう? でも、安藤さんも北澤先輩狙うっていうし、だったらライバルだし……」
「いやまぁそうだけど、スタートラインがそもそも違うっつーか。
だって柴崎はもうかなり北澤さんに近い場所にいるわけだろ? なのに勝負する必要あるか?」

眉を寄せて聞く松田に「あるよ」と鼻息を荒くして答える。

「もしも、私が北澤先輩ときちんと付き合えてて彼女として思ってもらえてたとしても、私は安藤さんと勝負するもん。
それに、北澤先輩は私を好きなわけじゃないんだったら、尚更ちゃんとライバルにならなきゃダメだと思う」
「まぁ、確かに柴崎は彼女になったからってそこに胡坐かかなそうだけど」
「だって、気持ちだって確かなものじゃないし、今は先輩も私の事受け入れてくれてるけど、それだっていつ変わるか分からないし……これからの事なんて分からないもん。
だから、頑張りたいから戦うのかも。頑張り続けてないと……見切りつけられちゃいそうで怖いから」

「そんなもんかねー」と軽い調子で言った松田が、空を見上げながら言う。

「しっかし、安藤さんもあれだな。肉食系女子」

どっぷりと暗闇に包まれた空には、人工的な灯りにかき消されながらもいくつかの星が光っていた。
11月も終わりに近づいた空は寒さからか澄んでいて、いつもよりも星がよく見える気がする。

もう手に息を吐きかけたくなるくらいに寒いのに、その息はまだ白くは残らなくて、これからもっと寒くなるのかと思うと気が少し重い。

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