イジワルな先輩との甘い事情
「でも、もし北澤先輩に振られたら、私も松田みたいにフラフラしちゃうのかなって考えると想像できないなぁ」
「柴崎はフラフラできないだろ。多分。ツラくってもひとりで抱え込んでそう。で、その後、ちゃんと消化して歩き出しそう。
なんだかんだ言って、女の方が強いじゃん……つーか、これから後輩と戦うっていうのに振られる話なんてすんなよなー。縁起悪い」
眉を寄せて怒る松田に、それもそうだねと笑うと、背中をぽんっと優しく叩かれた。
「応援してやるからな。俺、結構、柴崎には勝手に励まされてるし、感謝してるから」
「感謝って、なんかおおげさ。それに私、松田に何もしてないよ」
「でも、柴崎は俺の事否定しないから。フラフラしてるとさ、割とみんなに最低だなんだって言われるんだよ。
当人同士が納得して遊んでんだから別にいいだろって思うけど、周りには軽いだの甲斐性なしだのって」
「あー……そっか」
「そんなん言われれば俺だってそれなりに落ち込んだりもするけど……俺の知ってる中で一番一途にひとりを想ってる柴崎が俺の事否定しないで受け入れてくれるから、救われてる」
「甘えてるだけかもだけどな」って笑った松田が、「まぁそういうわけだから応援させろよな」ともう一度背中を叩くから。
「ありがと」と、笑顔を返した。
何をどう戦うのかも、何の為の戦いなのかも分からないけれど。
でも、安藤さんに北澤先輩を渡したくはないから。
そのためだったら、何にだって立ち向かえると思った。