イジワルな先輩との甘い事情



翌日、火曜日からスタートされた北澤先輩争奪戦。
何をどうすればいいのかが分からなかったから、とりあえず何でもバリバリこなそうと取り組んだのは、回ってくる通常の仕事や雑務だ。
だって他に何をすればいいのか分からないから、目の前にあるものを全力でこなす以外頑張りようがない。

だから、いつも以上に、小さなミスも見逃さないように伝票を精査したり、丁寧に書類記入をしたり。
仕事が終われば、今年から社員全員が強制的に受ける事になっている生保の試験勉強に取り組んだりして。

脇目もふらずデスクにかぶりつく私の隣では、安藤さんが同じように仕事や勉強をしていて、そこだけ雰囲気が異様だった。

そうして一日を終えて、翌日水曜日。
昨日と変わらず、ふたりして競争するように、それでいてミスを出さないよう丁寧に仕事をこなし、生保の勉強を終えて、ふたりでエレベーターに乗った時。
ふと疑問になったのか、首を傾げながら安藤さんが聞いた。

「柴崎先輩……なんか方向性違いませんか。二日やってみてからとかアレですけど、今考えてて、なんかおかしくない?ってなって」

「よく考えてみれば、別に仕事の勝負じゃないじゃないですか」って言う安藤さんに、目を伏せて「私もそう思うけど……」と呟いた後、視線を上げた。

確かに、仕事の勝負じゃない。
仕事で勝ったからって関係ない。



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