イジワルな先輩との甘い事情



考えてみれば……というか、考えてみるまでもなく、それは当たり前といえばその通りで……でもなんだか肩すかしでもくらった気分だった。
それは「試験終わってもう四日ですけど、結果発表はいつですか?!」と鼻息を荒くして課長に聞きにいった安藤さんも同じようで。

「そんなの、一ヶ月以上先に決まってるだろ」という課長の答えに、私と同じように呆気にとられて言葉をなくしていた。

でも……ちゃんと考えればそんなのすぐ分かる事だ。
半年前に受けた損保の試験だって、結果発表まで結構期間があって、自己採点がギリギリだった私はドキドキしながらその期間を過ごしたのはまだ記憶に新しい。
だから、今回の試験だって結果が一ヶ月後で当然なのに……。

背負っていた、ただならない気合いがあった分、がっくりと気持ちが落ちてしまった。
例えば、遠くに見えるあるモノを目指して走ってきたのに、急にそれが見えなくなっってしまったような、そんな気分。
喪失感とは違うけれど、似たものを感じていた。

課長の〝結果は一か月後〟発言に打ちのめされ、ふらふらとデスクに戻ってきた安藤さんが、ドカッと椅子に座ったのをぼんやりと眺めてから「気が抜けちゃったね」と声をかけた。

「本当ですよ……。でも、その前になんでそんなすぐ結果が出ると思い込んでたのかって自分が不思議です」
「本当にね……。なんか当たり前のようにすぐ出ると思ってたよね」


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