イジワルな先輩との甘い事情


「先週の土曜日も昨日も、なんでこなかったの?」
「え……」

昨日が水曜日だって事は気づいてた。
でも、先週の水曜日会った時、安藤さんとの勝負がつくまで会わないって伝えてあったから先輩の部屋には行かなかった。

もしかしたら先輩、私が言った事忘れちゃったのかなと思って「あの、勝負がついてなくて、それで……」と理由を言いかけると、先輩の声に遮られる。

「それは花奈の事情でしょ。俺との事には関係ない」
「で、も……」

確かに、私が勝手に始めた事だし先輩には関係ないかもしれないけど……。
でも、会わないって事はきちんと伝えてあったし……。

そうは思ったけど、もし待っててくれたなら申し訳ないだとか、そういう気持ちもあって何て言えばいいのか分からない。
責めたいわけじゃないのに〝先週会わないって言いましたよね?〟なんて言ったら、そう取られちゃいそうで怖いし……どうしよう。

どう説明すればいいだろう。
まさか先輩がこんな事言い出すなんて思ってもみなかったからただ戸惑っていると、不意に目の前が暗くなった。

もともと薄暗い室内で、その光さえ遮られた事に咄嗟に顔を上げると……すぐそこに先輩の顔があって、驚く間もなくキスされた。
びっくりして身体を引こうとしてから、背中側が壁だって気づく。

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