イジワルな先輩との甘い事情


暗い室内にわずかに響く水音が恥ずかしくて、目の前の先輩が、カッコよくて……酔いそう。
冷たく感じていたハズの壁が、今の火照った身体には気持ちよく感じてしまって。はしたない自分に泣きそうになる。

でも……どんなにはしたないって思ったところで、先輩への恋心がある以上、そんな自分を止められないのだろうけど。

唇を離した先輩が、ふらふらしそうな私を抱き支えながら頬や耳、顎のあたりに触れるだけのキスをする。
そんなわずかな感覚にさえ震える身体に、恥ずかしくなって目を伏せると、先輩が笑った。

会ってから初めて見る笑顔に、どきりとする。
見上げた先にいるのが、いつもの先輩だったから。

「花奈の勝負がつくまで会えないのは俺も嫌だし。
仕方ないからその勝負は俺がつけるよ」
「え……っ」

ぼんやりした頭に告げられた言葉に驚くと。

「あまり、俺以外に夢中になられてるのも気に入らないしね」

そう微笑まれた。


< 48 / 177 >

この作品をシェア

pagetop