イジワルな先輩との甘い事情
唖然として黙ってしまった安藤さんを見ていられずに思わず俯くと、隣からくすりという笑い声が聞こえた。
きっと、私がこうして恥ずかしくて俯くのさえ、先輩はお見通しだったんだろう。
思い通りだったからか、かすかな笑い声がどこか満足そうに聞こえた。
安藤さんが仕事を終えて出てくるのを待ち構えての話し合いは、会社から少し離れた公園で行われていた。
19時をすぎた公園には、子どもはもちろん、学生の姿もない。
公園を帰り道にしているサラリーマンがたまに通るくらいで静かだった。
じっとしていると、コートを着ていても寒くて、息も白い。
「社内恋愛は禁止ってわけじゃないけど、公にする必要もないように思うから、できたら黙っていてくれると助かる」
社内恋愛、という言葉にドキッと期待から飛び上がった心臓を静かに抑えこむ。
私と先輩の関係は、社内恋愛とは言えないだろうけど、社内恋愛よりも公になったらマズイものだ。
だから先輩はそんな言い方をしたんだろうって、自分に言い聞かせた。
先輩は優しいけど……だからってそこに期待して勘違いして、先輩に迷惑かけたくないから。
「黙っててもらえるかな」
もう一度確認するように言った先輩に、それまで黙っていた安藤さんがようやく口を開く。
その表情には呆れたような笑みが浮かんでいた。