イジワルな先輩との甘い事情


「いや、張り合ってるうちに、なんかもう無理だなぁって思ってたし、最初から諦めるつもりではいましたけど……まさか北澤さんが出てくるとは思いませんでした」
「え、最初から諦めるつもりって……」

思わず口を挟むと、安藤さんが笑いながら言う。

「だって先輩必死なんですもん。それ見てたら可愛くて、適当な気持ちで横取りするなんてできませんって。
狙おうかなーって言ったのだって、それ言ったら先輩どういう顔するかなって思っての事ですし。
なのに先輩、負けない!って、私なんか相手に仕事も試験勉強も頑張っちゃって……イタ可愛いっていうか」
「イタ……?」
「イタいでしょ、ちょっと。そこまで一途って重いし。でも……私にはない部分だったから、先輩のそういう姿見て、まぁ、それなりに思うものはあって」

そこまで言った安藤さんが、私を見て「今日、第一倉庫で誰かと話してたの、私聞いてたんですよ」と爆弾発言を落とした。
今日の倉庫でって言ったら……先輩にキスされた場所だ。
まさかそれを……?

そう思って何も言えずに口をはくはくさせていると、安藤さんが続ける。

「松田さん、って言いましたっけ。多分、先輩と同期の、軽くて有名な」
「あ……松田との話を聞いてたって事?」

安藤さんが聞いていたって言ったのは、どうやら松田との会話みたいでホッとするも……。
北澤先輩が第一倉庫に入ってきたのは松田が出て行ったすぐ後だ。

聞かれてた可能性だってある。
だけど、いつまで聞いてたのかなんて聞いたら怪しまれちゃうかもしれないし……。
不安になって黙っている私に安藤さんが言う。


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