イジワルな先輩との甘い事情
「先輩は悪い男なんかじゃありません。私が悪い女なんです」
一方通行だって分かってて、先輩の優しさに甘えているんだから……私が悪い。
本気でそう思うのに、私の言葉を聞いた先輩と安藤さんが揃っておかしそうに笑い出すから眉をしかめる。
笑われる事なんて言ってないのに。
「先輩が悪女って似合わな過ぎ……あーもう先輩、犬みたいで本当に可愛いです。
北澤さんもそういうところが好きなんですか? 忠誠心があって従順なところとか」
笑いすぎて目尻に溜まった涙を指先で拭いながら聞く安藤さんに、先輩が「まぁね。気に入ってる」と答える。
それを見て、聞いて……重たくなった感情がまたひとつ胸の底に沈んでいく気がした。
先輩はいつだって優しいけど。笑いかけてくれるけど……私を好きなわけじゃないんだって思い知って。
先輩は一度も私を好きだとは言ってくれない。
今だって、安藤さんは『好きなんですか?』って聞いたけど……先輩の答えは『気に入ってる』だった。
いつも、うぬぼれちゃいけないって思ってるくせに、こうして目の前に突き付けられると動揺してショックを受けちゃう自分が情けない。
「とにかく、内緒にしますから。安心してくださいね。先輩」
そう言ってくれる安藤さんに、曖昧な笑顔しか返せなかった。