イジワルな先輩との甘い事情


食堂を出てすぐに園ちゃんと別れて、エレベーターで預金課のある三階まで上がる。
そして一歩フロアに出たところで、さっきまで園ちゃんとの話題に上がっていた古川さんの姿が目に映った。

どうしてすぐ目に入っちゃうんだろうとも思うけど、古川さんがスーツなのも多分大きな理由のひとつだ。
園ちゃんは、古川さんと過去に何度か話したけど感じがものすごく悪かったとかで、なんだか目の敵にしてたけど……。
こうして見るとそこまで太っているわけではないと思う。
本当にぽっちゃりって感じで。

また北澤先輩に会いに来たのかな……と、ぼんやりと眺めていると、こっちに歩いてきた古川さんとばちっと目が合ってしまって肩が飛び上がる。
すぐに目を逸らして会釈だけして課に戻ろうとしたけど、「柴崎さんでしょう? ちょうどよかった」と声をかけられて立ち止まる。
振り返ると、古川さんが私にたくさんの書類らしきものを差し出していた。

「これ、シュレッダーしておいてくれない?」

突然のお願いに何も言えずにいると、古川さんが面倒くさそうな顔をして再度言う。

「聞こえなかった? シュレッダーしておいてって言ったんだけど」
「聞こえましたけど……なんでですか?」

なんで頼まれたのかが分からず聞くとますます顔をしかめられたけど、その理由が分からない。

だって、古川さんと私はこれが初会話だ。
それまで仕事の流れ上関わった事だって一度もなければ、先輩なのか後輩なのかも分からないような関係だ。


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