イジワルな先輩との甘い事情


少し大げさにとれるくらいにテンションを上げた安藤さんに驚く。
ちょっと……というか、だいぶわざとらしい感じもするから火に油にならないか心配になったけど……古川さんは特に言い返す様子はなかった。

安藤さんの言葉が正論だったからか、面白くなさそうに眉を寄せて目を逸らしているだけで。

「でも、だったら最後まで責任もってやり遂げるのがいい女じゃないですかね。
せっかく秘書課なんて上品なところにいてみんなから憧れられてるのに、自分で格下げちゃうなんてもったいないですよ。
それとも……その書類の中に本当は破棄予定のないものが紛れ込んでた時、柴崎先輩にミスなすりつけるためだったりして」

「どっちですかね?」と聞いた安藤さんの声のキーが少し下がったように思えて見ると、挑発するような目をしている事に気付く。
そして古川さんに視線を移せば、こっちはギリッと歯を食いしばる音が聞こえそうな顔をしていて……。

「あ、あの……すみません」

安藤さんの態度に気を悪くしたならと思って謝ると、古川さんは面白くなさそうな顔をして背中を向けた。
数センチくらいの厚みのある書類を胸に抱えたまま、ヒール音を響かせ離れて行く。

その後ろ姿にほっと胸を撫で下ろしていると、隣に立つ安藤さんが鼻息を荒くして口を開いた。



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