イジワルな先輩との甘い事情
松田の話を聞きながら、そういえば先週話した時もそんな感じだったかなと思う。
安藤さんに言い負かされたら嫌になったのか、すぐどっか行っちゃったし……。
結局あの書類はどうしたんだろうって少し心配にもなったけど、金曜日も特に問題はなく融資管理課は回ってたみたいだし、大丈夫だったのかな。
三人して、古川さんの背中がどんどんと遠くなるのをじーっと眺めていたけど。
「どこ行くんだろ。この辺に家があるのかな」という、園ちゃんの言葉にハッとした。
そうだ。古川さんの向かう方面には――。
「北澤先輩のマンション……」
呟いた途端、ふたりが勢いよく振り返ったけど、それに驚く余裕もなく古川さんの背中を見つめた。
「この先に、北澤先輩のマンションがあるけど……」
でも、まさか。
そう思いながらも心臓は嫌な音を立てていて……まるで警告音みたいな響きに胸の前で手をぎゅっと握りしめた。
と、同時に、その手を勢いよく掴まれる。
「つけるよ」
手を掴んだ園ちゃんを見ると、その隣で松田も眉を上げ頷いていて。
連れられるまま、古川さんの後を追った。