偽りの自分。


教室に入ると、クラスの全員があたしに注目する。


何?


『松宮、先生に何言われたんだー?』


隣の席の男子があたしに言う。


『どうだっていいでしょ。』


あたしはそう言って、机に顔を伏せた。


ほっといてよ。



すると、先生が教室に入ってきた。


あたしは起き上がる。


『一時限、悪かったな。でも、静かに自習が
できていたようで良かった。号令はしなくていい。.....解散。』


先生が“解散”というと、一斉に皆は立ち上がった。


あたしと一緒に吉野をいじめていた雫たちは、
さっそうと吉野に駆け寄る。


『今まで、ほんっとうにごめんね!!
もう絶対にいじめなんかしないから!』


雫たちは大きな声で言ったので、席が遠い
あたしにまで声が聞こえてきた。


『絶対にいじめなんかしないでね。
仲良くしようね!』  


吉野は笑顔で言う。


何?

そんな簡単に許せる?


あたしだったら、絶対許さないけど...。


『ミスもごめんなさい。』


雫たちは、ミスに謝りにいく。

あたしも謝らないとだよね。




『吉野さん、ごめんね。』


あたしも、吉野に謝りにいったけど、
なんだか雫たちの様子がおかしい。

まるで、あたしを避けているみたい。

ヒソヒソ、何を喋っているの?


『いじめはしないと誓ってください。
これから、仲良くしようね!』


吉野はまたまた笑顔で言った。


『....うん。いじめはもうしないから。』


“吉野”って呼び方はやめて、
前みたいに呼ぼうかな。


『絵里花っ』


雫たちが何を考えているのかはわからないけど。
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