イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「……ちょっと蚊に刺されちゃって」

私の苦しい言い訳に、奈々子がプッと吹き出す。私は久世さんにバレないようにテーブルの下の彼女の脚を蹴った。

「桜子ちゃんの綺麗な肌を刺すなんて悪い蚊だね」

久世さんは笑顔を絶やさぬまま有無を言わさず私の手をそっと剥がし、首筋のキスマークを食い入るような目で見る。

「ホント、悪い蚊だ。今日から虫除けスプレーでも、つけておくといいよ」

「……はい」

声は優しいけど、やっぱり今日も久世さんの目が怖い。

何か怒ってらっしゃいます?

殺気がみなぎっているような気がするのは気のせいでしょうか?

キスマークってバレちゃってるよね。犯人が刹那さんってのも言わなくてもわかるだろうし……。

せめてもの救いはここに刹那さんがいなかった事だろうか。

いたら私が刹那さん襲った事までバレてたよ。

そしたら……久世さん、自分の身の危険を感じて私を辞めさせちゃうかも……。
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