イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「おい、聞いてるか?」

刹那さんが私に呼び掛けるが、怖くてそれどころではない。

再び寒気に襲われると、またカチカチと歯が鳴った。

「まだ寒いのか?」

心配そうに刹那さんが声をかける。

「……溺れそうになった感覚を思い出すと怖くて……」

私が自分の肩を抱くと、刹那さんは立ち上がって別室から毛布を手に持ってきた。

「ちょっとこれで我慢してろ」

そう言って暖かそうな毛布で私をくるむと、刹那さんは姿を消した。

「……どこに行ったんだろう」

刹那さんの姿が見えなくなると、また眠くなってきた。

視界が霞む。

夢と現実の世界を行ったりきたり。

いつの間にか刹那さんがパジャマに着替えて戻ってきて私の髪の毛を乾かし始めたかと思うと、次の瞬間にはあのベッドに運ばれて寝かせられた。

今日は午後からあまり食べてなくて力も出ないし、眠くて堪らなくて、こんな状況許してはいけないのに抵抗する気も起こらない。
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