イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
刹那さんに手渡されたのはグラスに注がれたブラウンの液体。

言われるまま一気に飲み干すと、あまりに苦くて舌がおかしくなる。次の瞬間にはカァーッと身体が急に熱くなった。

「何?……これ不味い」

「ブランデー。ちょっとは身体が温まっただろ?」

いつになく刹那さんの声が優しい。

「……うん」

私は子供のように素直に頷く。

たぶん、まだ寝ぼけていたのだろう。

「いいか、風呂で寝るな。俺がちょうど帰ってきたから良かったものの、俺がいなかったら風呂で溺れて死んでたかもしれない」

刹那さんは屈んで私と目を合わせると、ガミガミと先生のように説教を始めた。

メガネをかけてるせいで本当に先生に思えてくる。

「風呂で溺れる……」

私は刹那さんの言葉を繰り返す。

確かにお湯の中に沈んで、もがけばもがくほど自分でもどうしていいのかわからなくて本当に死ぬかと思った。

さっきの感覚を思い出すと……怖い。
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