イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
金で動く人間だと思われたくない。私にだってプライドがあるのだ。

「ちょっと待って!勝手に話を進めないで下さい。刹那さん抜きでこの話は出来ません」

「では、刹兄さまがいいと言えば、この家から出て行ってくれるんですね?」

雪乃さんが口角を上げる。

「……そうですね、刹那さんがいいと言えば」

私は腕を組ながら渋々認める。

「それなら答えは決まってるわ。あなたなんかより私を選ぶに決まってるもの」

雪乃さんが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

「あなただって好きで刹兄さまのところにいるわけじゃないんでしょう?早く出ていけるように、荷物をまとめておいた方がいいわよ」

そう……確かに私は刹那さんに強要されてここに来た。

でも今は……刹那さんとこの家にいると居心地がいいと感じる。

雪乃さんに出て行けと言われると、素直に頷けない自分がいる。
< 187 / 288 >

この作品をシェア

pagetop