イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
このままドア閉めたらきっと怒るだろうな。

「刹兄さまは居ないようですね。ちょうど良かった。私、今日からこのマンションの下の階に引っ越して来たんです」

雪乃さんは玄関に刹那さんの靴がないか素早くチェックすると、私を睨み付けるように見据えた。

その眼光に思わず怯む。

「……はあ」

「右京くんから聞きました。刹兄さまとはまだ本当に結婚はしていないとか」

「それは……その……」

雪乃さんにどこまで話していいのかわからなくて言葉に詰まる。

「単刀直入に言いますね。お祖父様が退院したら、ここから出ていってくれませんか?私、小さい頃からずっと刹兄さまの事が好きなんです。刹兄さま以外の男の人なんて考えられない」

私を見下すような挑戦的な目。

雪乃さんの一方的な要求に思わずムッとした。

「それは刹那さんが決める事です」

「お金が問題ですか?だったら、私の両親に頼んで出してもらいます。私の両親も刹兄さまとの結婚を望んでますから」

雪乃さんの口から「お金」という言葉が出て、カチンと頭にくる。
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