イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
頭が重くて痛い。目はうつろでだんだん意識がもうろうとしてくる。

「……私……死ぬのかな?」

人を好きになって死ぬなんて聞いた事はないけど……。

「ははは……。刹那さんが帰って来たら死体になってたりして……」

これ以上、彼に迷惑はかけられない。

ここを出て行かなきゃ。それしか頭になかった。

ゆっくり立ち上がり、重い身体を引きずりながら壁づたいに玄関へ向かう。

荷物を詰め込んだスーツケースの事はすっかり忘れていた。

この時の私は思考能力もなく、おかしくなっていた。

裸足のまま玄関に出てドアハンドルを掴むと、ガチャッという音と共にドアが開いて、私はバランスを崩す。

そのまま倒れると思った。

バタンという自分が倒れる音がするかと思ってたのに、誰かが私の身体を抱き止めた。

「桜子!どうした!」

数日ぶりに聞くその声。
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