イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
靴音がピタッと止まると、私は息を止めた。

お願い!早く病室を出てって!

今は刹那さんの顔見れないよ~‼

「狸寝入りか?聞いていただろう?雪乃の事はもう大丈夫だ」

クスッと笑いながら刹那さんは私の頬を撫でる。

うっ……何でバレるかな。でも、死んだ振り。死んだ振り。

桜子は死にました。お帰り下さい。

動かずにそのまま寝た振りを続けると、頬に刹那さんの吐息を感じた。

「眠り姫ならキスで目覚めるか?」

面白そうなその声の響きにギョッとしてガバッと飛び起きる。

「駄目です!駄目!」

「やはり起きてたか。いろいろと説明してもらわないとな」

刹那さんが私の顔を見てニヤリと口角を上げる。

怖い……。

来たよ、来たよ。悪魔な刹那さん!

ええい!駄目元だ!

「あっ……。また眠くなってきた。もう一回寝ても……良いですか?」

刹那さんの表情を見ながら上目遣いにお願いしてみる。
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