イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
どちらの唇が切れたのかわからないが、微かに血の味がする。それなのに、刹那さんも私もキスを止めなかった。

私が止めなかったのは刹那さんが欲しかったからだ。

「好き」という言葉は言えないけど、この瞬間は本能に従おう。

ここが病院という事も忘れ刹那さんの激しいキスに夢中で応えていると、彼は私の首筋を甘噛みした。

聞こえるのはお互いの息遣い。

「今度俺から逃げたら許さない」

刹那さんが以前つけた噛み跡にガブッと噛みつく。とたんに襲う甘い痺れのような痛み。

「余計な事を考えない位もっと俺に夢中になれ」

刹那さんの綺麗な瞳が私の目を捉える。

彼が私にペット以上の気持ちを持っていると思うのは都合が良すぎるだろうか。

「すでに夢中です」と言いたい気持ちを抑え、私から刹那さんにキスをすると、彼は全ての女を虜にするような極上の笑みを浮かべギュッと私を抱き締めた。
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