イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
私が見てるのが幻影で奈々子ならメガネなんてないはず……でも手の中のメガネの感触は本物で……。

「本物のメガネだ!ええ~、何で刹那さんがここにいるの?」

一気に酔いが覚める。

酔ったままの方がどんなに幸せだっただろう。

さっきまでは確かに奈々子だったはず……。何で刹那さんに入れ替わってるの~!

私……奈々子かと思ってさっき刹那さんが好きって言わなかった?

どうしよう~。どうしよう~。逃げ場がない。

神様、仏様~、どっかに穴空いてないですかあ~!

「お前の親友から電話があって、迎えに来た」

刹那さんは私の手からメガネを取ると、胸ポケットにしまった。

「……迎えに来たって……。私はもう……刹那さんの仮の奥さんじゃないんですよ」

「結論から言うと、薫子とは結婚しない」

刹那さんは落ち着いた様子で淡々と告げる。
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