イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「一ヶ月以内に姉の薫子が戻れば、家に帰っていい。戻らなければ、俺と結婚してもらう」

スーツの内ポケットから白い封筒を取り出して、鷹司さんは私の前に置く。封筒を手に取り中身を取り出すと、それは白紙の婚姻届だった。

「今ここで署名しろ。印鑑は後で君のご両親に持ってきてもらう」

鷹司さんはスーツのペンポケットから高級そうな紺のペンを取り出して、私に差し出す。

私が受け取るのを躊躇っていると、彼は冷たい表情で私を脅してきた。

「逆らえば、梅園商会は倒産する。家族だけじゃなく多くの社員が路頭に迷うことになるが、それでも良いのか?」

冷酷な目。この人なら顔色も変えず、父の会社を潰しそうだ。

「……姉が戻れば、これは破棄してもらえるんですよね?」

「ああ。君の望み通りにしよう」

私の目を見て鷹司さんが微笑しながら頷く。
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