イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
慌てた様子で「桜子!」と私を呼ぶ刹那さんの声が遠くで聞こえたような気がしたが、その時には私は黒い渦巻きに飲み込まれていた。

これは悪夢だ……。

現実のわけがない。

夢から覚めれば、いつも通りの生活。

お母さんの代わりに朝食を作って、洗濯をして、大学へ行って、バイトをして……。

でも、次の朝目覚めると、私がいたのは知らないベッドだった。



見たこともないキングサイズの大きなベッド。

新品らしき白い枕に、白いシーツ。

「夢……じゃない」

パッと目を開けると、ベッドには私しかいなかった。

その事にちょっとホッとする。

横に刹那さんがいたら、失神したかもしれない。

でも、左手の薬指の結婚指輪を見ると思わずハーッと溜め息が出た。
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