イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
久世さんは全部お祖父さんに教えてもらったって言ってたけど、久世書店の常務の仕事もしてるし、器用な人だなって思う。

「久世さん、落丁ありませんでした」

「そう。ご苦労様」

久世さんがニコって微笑んだ時だった。

螺旋階段のある方からコツンコツンという靴音が響くと、なぜか一気に鳥肌が立つ。

聞き覚えのある靴音。

……まさか。

顔からサーっと血の気が引いていく。

「右京から大学が終わったら連絡するように言われていたはずだが」

怒気を含んだ冷たい声が私の脳に直接響く。

その声と共に姿を現したのは、やっぱり冷血メガネ男だった。

見つかってしまった。

久世さんの言ってた「急な来客」って、刹那さんの事だったのか。

冷たいその眼差し。メガネをかけていると、余計怖く見える。

「そ、そ…それは……」

身体が萎縮してしまって、上手く声が出せない。
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