イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「馬鹿!違うだろ!」

「痛っ‼」

……地味に痛いんですけど。

額を押さえながら、私は目で抗議する。

「俺が薔薇の花の風呂に一人で入ったらただの変態だ。それに、深夜の一時に帰ってきて湯船に浸かる気力はない」

「それはそうですね。でも……薔薇のいい匂いが……」

疑いの眼差しで刹那さんを見ると、彼はハーッと説明するのがめんどくさそうに溜め息をついた。

「それは、桜子のが移ったんだ。それに……誰のせいで寝不足だと」

刹那さんの最後の方の言葉はほとんど独り言のようでよく聞き取れなかった。

「はい?何か言いました?」

私が聞き返すと、刹那さんはひどく疲れた様子で頭を振った。

「いや、いい。気にするな」

「はい。でも、そうかあ。私の匂いが移ったんですね」

納得しながら呟くが、その意味をよくよく考えて顔がボッと火がついたように真っ赤になった。

匂いが移るってどれだけ親密なの?
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