イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
目が鷹司さんと合うと、彼のメガネの奥の目がキラリと光った。

名前を呼ばれたのは初めてのはずだ。しかも呼び捨て。

でも……その声の響きが懐かしい感じがするのはなぜだろう。

「桜子、時間がない。一家そろって路頭に迷いたくなければ早く仕度をしろ」

冷たい口調。

主導権は完全にこの男にある。

うちの財政状況は知らないけど……優しい父が黙ってしまったということは……かなりヤバイということなのだろう。

私はいいとして……優雅な生活しか知らない両親が路頭に迷ったら……。

想像するだけで怖い。

母なんて家事もやったことがない人だ。働いたことすらない。父だってプライドがあるし、五十を過ぎて今さら人の下で働けるはずがない。

姉はお父さんの会社の役員だけど、肩書きだけで毎日遊んで暮らしてるし……。
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