イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
……なんとか式を無事に終えればいいのよね。

私がちょっと我慢すれば……みんなが助かる。

「わかりました」

私が鷹司さんを見据えて返事をすると、彼はフッと微笑して秘書の榊さんと一緒に部屋を出ていった。

私は数十秒ハンガーにかけられた純白のウェディングドレスとにらめっこする。

フランスの有名デザイナーに作らせたというこのドレス。

流れるようなドレープも、胸元の開いたデザインも素敵だけど……自分が着るとなると話は別。

姉は胸もあるし、身長も百五十八センチの私よりも十センチも高くてスタイルもいい。

でも、私が着たら……ドレスがずり落ちそう。

ハーッと深い溜め息をつくと、私はドレスを手に取り、フィッティングルームに入る。

自分が着ていたピンクのワンピースを脱いで、ウェディングドレスに着替えるが、悲しい事に胸がぶかぶか。

フィッティングルームのカーテンから顔を出し、母に声をかける。

「お母さん、着付けの人呼んできて」

母に着付けの係の人を呼んでもらうと、無言で胸に何枚かパッドを入れられた。
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