ふわふわふるる【BL】
「お前がサボリ?珍しいな」
俺は片耳からイヤホンを外して如月を見上げた。立ったままの如月は、はにかむように笑って俺の隣に腰を降ろした。
成績もスポーツも中の上。優等生ってほどでもないが真面目でおっとりとした性格の如月。
運動には自信があるがテストの成績はからきし。しかも喧嘩っ早いと来る俺とは正反対―――
ゆえに同じクラスであるのにあまり話したことがない。
それなのに俺が如月を好きになった理由は―――
こいつが移動教室のときに俺の目の前で派手にヅッコケたからだ。
あまりにも見事なこけっぷりに笑いそうになりながらも、無言で手を差し出し助け起こすと
「ありがとう相田―――優しいんだね」
如月はババロアみたいなふわふわの笑顔でそう笑った。
学校でも一匹オオカミ…って言えば聞こえはいいが、単に人一倍人相も態度も悪い俺に近づく人間なんて居なくて、周りから敬遠されている。
『喫煙がバレて一週間の停学を食らった』とか『ヤクザとつるんでる』とか『人を一人殺した』とか―――根も葉もないうわさ話が独り歩きしている。まぁ否定するのも疲れるからそのままにしてるけど。
そのおかげで大げさかもしれないが廊下を歩けば生徒が道を避けて行く―――みたいな……
だから如月みたいな真面目なヤツがこんな風に笑ってくれるなんて―――はじめてだった。
堕ちた―――瞬間だった。
それ以来俺は男だと言うのに如月を見つめ続け、如月があの英語教師に想いを抱いていることを知った。
知りたくなかったけどな……
如月はことあるごとにこけたり、何かにぶつかったりする。
用はドジなのだ。
でもそんなドジな部分も俺が守ってやりたい―――なんて思うから重症だぜ。
「何聴いてるの?」
如月にまたも聞かれ、
「ああ、うん。何か古い曲」
「そ」
如月は短く言って「俺にも聞かせて」と言って手を差し出してきた。