ふわふわふるる【BL】


そんな風に素直に手を差し出すこいつに、素直になれない俺が答える。


「てかお前、俺のこと怖いとか思わねぇの?」


「怖い?何でさ」


如月は両膝をそろえて体育座りをして、その膝の上にちょこんと手を乗せている。


ちっくしょう…!可愛いじゃねぇかよ!!


赤くなる顔を見られたくなくて顔を逸らすと


「ふつーのヤツなら怖いとか思うんだよ」


「そ?じゃぁ俺はふつーじゃないのかもね」


如月はまたもふわふわ笑って、おもむろに俺の髪に手を伸ばしてきた。びっくりして振り向くと


「桜。ついてたよ。きれーだね」


如月はまたも優しく笑った。


きれーなのはお前の方だ。思わず出かかった言葉を飲み込む。


桜の花びらの中、浮かび上がるその姿―――白い花びらが如月の柔らかそうな髪に降り注ぎ、


思わず手を伸ばしたくなったが、やめた。






「写楽せぇ」





「何それ」


如月は声を立てて笑った。


俺の好きなふわふわの笑顔だ―――


プリンにマシュマロ、シフォンケーキにシュークリーム。世の中にはふわふわで甘いものがたくさんあって、顔に似つかず全部好きな俺だが


一番好きなのは


ババロアみたいなこいつの笑顔。


この笑顔ももう見れなくなるんだ……と思うと、きゅっと心臓が縮まる。


告って(いって)しまおうか―――


どうせ俺たちは明日から別々の道を歩むことになる。


告ったところで―――この後の生活に支障がきたすこともない―――


いっそバッサリ斬られれば、こっちもスッキリする……なんて自分勝手な気持ちを如月に押し付けようとしている俺。


「……如月」


「何?」


そのときだった。


「こらっ!!!!!お前ら!!卒業生だろ!


こんなところで何やってる!!」


卒業式に参加しないで、アホみたいに見回りなんてやってるくそ真面目な教師に見つかって、俺は立ち上がると慌てて如月の手を引いた。







「ヤベ!先公だ!!逃げんぞ!!」







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