ふわふわふるる【BL】
「え…逃げるって!?」
如月は何か言いかけたが、俺は如月の手を引いて走り出した。
耳の奥で言葉が生まれた。
走れ
―――走れ
走 れ
青春を駆け抜けろ―――
そうだ。
俺は今青春してるんだ。
十八歳の春ってのは二度と来なくて、二度と戻れなくて、この手を離したら―――もう二度と……
俺は夢中になって走った。
その後を何とか如月がついてくる。
「待っ…!相田っっ」
如月の声が聞こえて、腕を強く引っ張られる。その瞬間、
ドタっっ!!
「「うわっ!」」
俺たちは声を揃えてその場に倒れた。どうやら如月が転んでその巻き添えになった形の俺。
「ってー……てか何で何もないところでこけるんだよ。やっぱお前ドジだな。俺まで巻き添えじゃねぇかよ」
「あ……あはは~!ごめんね相田」
如月は照れ笑いを浮かべながら、俺を見下ろしてくる。
俺は―――そんな如月を見上げている。
どうゆう状況なのか理解できなくて慌てて頭を振ると、どうやら俺は如月を庇って自ら下敷きになったようだ。俺に覆いかぶさるかのように倒れ込んできた如月を何とか受け止めている状態。
いつの間にか人目のつかない旧校舎の裏側まで回り込んだみたいだ。
誰も居ない旧校舎の壁に―――俺たちの影が重なっていた。