この地に天使が舞い降りた-ANGEL-
「ていうか……なんで俺がその琥珀とカンナ? に入らなくちゃいけないんですか?」
「それは……」
雪がじいっと薫の顔を見た。
……可愛いから。
そう言ったら女とか関係ナシにブッ潰されそう。
喧嘩慣れしてるからそんなことさせないけれど。そう、雪は思った。
「ていうか不良チームってなに」
問題はそこだ。
「あー、と、なんか喧嘩したり?」
なんてふわふわとした回答だろう。
今会ったばかりの凉斗なのに蹴りたくなった。
「いや俺喧嘩したことないし。空手とか柔道とかはしてるけどそれを喧嘩に応用しようとは思わないよ」
「えっ、薫くん空手と柔道してるん!? 意外!」
小柄で華奢な体からは全然予想できない。いや、てこの力を使えば空手や柔道くらい誰でもできるのか。
「まあまあ! 琥珀のみんなは薫くんを歓迎する用意はできてるし!」
「は? いや、ちょ、え?」
無理矢理腕を引っ張られた。
横で雪は薫のお弁当を片付けている。
「ねぇ俺まだ弁当食ってたんだけど……!」
「屋上でみんなで食べよ!」
凉斗は爽やかな笑顔で言った。初対面なのにこの強引さは何。
イケメンなら何をやってもウザくならないという噂は嘘みたいだ。クソみたいにウザい。
「カンナも琥珀も今屋上にいるから、来て!」
ここで薫は学校の塀に『カンナ』『琥珀』と書いてあったのを思い出した。
所々に書いてあったことからその権力の強さが伺える。
「放しやがれクソ野郎ーーー!」
叫び声は空しく響いた。騒がしい校内にそれが伝わることはない。
* * *
時は数十分前に遡る。
「アタシははドキがむねむねしているんや」
何を言い出すんだコイツは、という目で皆が雪を見た。
「あの入学式で見た薫くんの顔が頭から離れない……」
「あっそう。……ていうかオレ、トイレ行ってくるわ」
「勝手に行きやがれ。」
雪はしっしと凉斗追い払うようにしてから、「だからさ」と一呼吸おく。
「カンナに誘おうと思うんだけど」
雪がそう言った瞬間、今までぱそぱそぱそ……とひたすらPCをいじっていた風早友奈(かぜはやゆうな)が顔を上げた。
彼女もまた、美人である。
「いいじゃんソレ。顔可愛いし女子ん中入っても歓迎されそ」
おとなしそうな見た目とは裏腹に、砕けた口調だった。
入学式の日に薫の存在を雪に知らせたのも彼女だ。
「だから今から誘いに行ってくる」
「薫くんならここ最近裏庭でお昼食べてるわ」
「オッケ、ありがと。さすが情報通」
友奈の得意分野は情報だ。
雪の言葉に少し笑うと、言った。
「……雪ちゃん、速く行かないと凉ちゃんに先越されるよ? 私この情報、凉ちゃんにも提供したから、多分凉ちゃんトイレ行くって偽って薫くん誘いに行く作戦じゃないかしら」
「早く言えクソが!」
けらけらと笑う友奈を一瞥して、雪はダッシュした。
その一部始終を見ていた優雅、葉太、兼行真白(かねゆきましろ)、舞、クロエは友奈の性格の悪さを見て愕然とする。
仲間のはずなのに仲間に見えないのは何故か。
それを言ったら社会的に抹殺されてしまうので、全員静かに薫の到着を待ったーー。
* * *