私の横に居る人
智樹先輩は運転しながら前を向いたまま話す。

「そしたら君は出かけていた。石野さんの言葉に甘えゆっくりさせてもらったけど、君は帰ってこない。やっぱりそんなにうまくいかないよな~って思った時、帰りに君に会えた。」

はぁ~と智樹先輩は息をつく。

「暗かったけど、俺ははっきりわかった。あの時の女の子だと。帰り道は声をあげてしまいたくなるほど嬉しかった。」

赤信号になった瞬間、智樹先輩はこちらを見て微笑んだ。

「まさか寛人と知り合いで、同じサークルに入ってくるなんて思ってもみなかった。でもそうやって悠ちゃんと大学で知り合った後、どうやって君のそばにいられるかばかり考えた。それでいいと思っていた。君の幸せそうな顔を見られるだけで俺も幸せだったから。でも響子の健に対する相談を受けて行くうち、そばに居るだけで本当に満足なのか考え始めた。実は石野さんには、悠ちゃんと再会してすぐに俺の気持ちを話した。」

「お父さんは何もそんな事言ってませんでした。ただどういう間柄なのかは聞かれましたが…。」

「石野さんは、悠ちゃんの気持ちにゆっくりと寄り添ってほしいといった。自分達が過保護に育てたせいか、自分の気持ちを親である私達にも見せないって。
だからそういう悠ちゃんを変えてほしいと言われた。君には出来るかもしれないからだって。」

お父さんがそんな事を考えていたなんて、全く気が付かなかった。
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