私の横に居る人
「だから告白はもっと時間を置こうと思った。でもダメだな。映画を見た後の君の泣き顔の可愛さに、つい君を抱きしめてしまった。あの公園で告白してしまおうかと思った。邪魔が入ってしまったけどね。」

あの時の事は私もしっかり覚えている。

「その後も自分なりに気を付けていた。石野さんに言われた事もあったけど、その頃には自分の気持ちを出して、悠ちゃんとの関係が壊れる事も怖くなっていた。でも夏の旅行の時にまたやってしまった。あの時は、健のあの様子を見てイライラしていたから。ただ健が悠ちゃんに告白するなんて思ってもみなかったから、正直焦った。でも君が健を選ぶのなら、それは仕方ない事だと思った。健はそれだけ人間的に魅力的な男だからね。」

山を抜け、道路に雪がなくなってきた所で、先輩は左手を伸ばしてきた。

私はその手を上から包むように、ぎゅっとつかむ。

「私は、智樹先輩とのこの関係を壊すぐらいなら、告白なんかせずにずっとこのままで良いと思ってました。そうすれば学校でもバイトでも一緒にいらせるし、家にも夕食にかこつけて来てもらえる。」

智樹先輩は重ねていた手を恋人つなぎに変えた。

「でも思いを伝えたくなる時が来るよってみんなに言われました。」

私はニッコリと智樹先輩に笑った。

「このまま俺の下宿に行くよ。」

「智樹先輩…。」
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