私の横に居る人
「どうした?」

私がスマホを見せる。

「俺って石野家に信用あるんだな。」

そう笑って、智樹先輩は運転を始めた。

「ここだよ。」

駐車場に車を止めると、智樹先輩は見上げた。

質素な感じのアパート。

きっと学生さんが多いんだろうな。

「どうぞ。」

「お邪魔します。」

恐る恐る玄関へ入る。

ドアが閉まったと同時に先に入った智樹先輩がこちらに振り返ると、私を抱きしめた。

「やっと手に入れた。好きだよ、悠。」

涙があふれてきた私は無意識に先輩の背中に手を回していた。

「私もです。私も智樹先輩が好きです。」

やっと自分の気持ちを伝えられた。

伝えたくなるってこういう事だったんだ、本当に素直に言葉が出てきた。

智樹先輩は額に軽いキスをした。
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