私の横に居る人
いきなり握手を求められてびっくりしたけど、私は恐る恐る手を差し出した。

「僕はいつも初対面の人とは、握手をするんだ。びっくりさせたかな。でもその時の手の感じと雰囲気は、その人を知る上で大事な手掛かりとなるんだ。君は大丈夫、しっかり仕事をしてくれそうだ。さすが石野部長のお嬢さんだ。何だかそこに居る斉藤君と似た雰囲気を感じるね。」

課長はにっこりと笑って、智樹先輩に向き直る。

「斉藤、向こうの談話コーナーで仕事の内容を説明してあげて。手が空いたら、俺もそちらへ回るよ。」

課長さんが気さくに話しかけてくれたおかげで、人生初のバイトの面接もすんなりと終わった。

私はそのあと、部屋の片隅にある談話スペースで、智樹先輩からは仕事の内容を、課長からはバイトの待遇の話を聞いた。

「今日はこれでいいよ。短い時間でもいいからなるべく毎日寄って。校正の仕事はいつもあるから。締切の都合があるから、時には遅くまで残ってもらう事もあるかもしれない。締切を一覧表にしておくから、自分で管理していってね。だからバイト代は、出来高制になるよ。でも無理な時は、なるべく早く言う事。社員でフォローするからね。」

最後に課長はこう説明してくれた。

「これからよろしくお願いします。」

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