落ちる恋あれば拾う恋だってある
ビル前のロータリーにはまだパトカーが止まっていた。
その後ろに止められた椎名さんの車の前にはぐちゃぐちゃになった花束が落ちていた。
「あ……」
私はそれを拾い上げた。
投げ捨てられ誰かに踏まれたであろう花束は丸みを帯びた可愛らしい形が崩れ、花は萎れて花びらが汚れて茶色くなっている。
「せっかくもらったのに……」
花は数日の美しさであっても、こんなに早く萎れるはずではなかった。私にとっては宝物だったのに。
「またいつでもあげるし……取りあえず乗りな」
「はい」
そう言う椎名さんは助手席のドアを開けて私を座らせると車を走らせた。
「これからどうしようか? 勢いで出てきちゃったけど」
椎名さんは腕が痛むのか、ハンドルを回すときはほとんど右腕しか動かしていない。
「病院に行きましょう。椎名さんのその腕を見てもらわないと」
「この時間じゃもう診察してないよ。それに大丈夫。痛いけど動くし」
「でも……」
「それより腹減った。どっか食いに行く?」
私もお腹がすいた。でも椎名さんの怪我も気になる。
「うーん……」
「いいや、取りあえず手当てしよう」
「え? どこで?」
椎名さんは質問には答えず無言で車を走らせ続けた。
一時間ほどたった頃、椎名さんの車はアパートの前の駐車場で止まった。
「着いたよ」
「ここって……」
「そう、俺んち」
「え? でも……」
「その腫れた顔とこの怪我じゃ外で食う気なくなったわ。このまま俺のものになる気があるならおいで」
「あの……」
「…………」
「…………」
「……ふっ、固まるなよ。強引なことしないから大丈夫。手当てするだけだからおいで」
「はい……」