落ちる恋あれば拾う恋だってある
「それは申し訳ございませんでした。すぐに交換させて頂きます」
「よろしくお願いします……」
宮野さん、これで大丈夫かな? 文句ない?
さっきから一言も話さなくなってしまった宮野さんを見ると、じっと突っ立ったまま後ろに立つ椎名さんを凝視していた。
「ああ、来週から弊社の担当が変わります」
宮野さんの視線に気づいた担当さんに促され、前に出た椎名さんは笑顔を崩さず口を開いた。
「来週より担当させて頂く椎名と申します」
なんで? どうして? こんな偶然あり?
疑問ばかりが頭に浮かぶ。
椎名さんは会社のロゴ入りTシャツを着ていても合コンの夜と変わらずかっこよくて、合コンの夜と変わらず何を考えているのか分からない笑顔を向けた。
宮野さんはそんな椎名さんに目が釘付けになっている。
「交換する新しい植物は違う種類の方がよろしいですか?」
今の担当さんが話しかけても宮野さんは椎名さんから視線を外さない。
「あの……宮野さん?」
私は恐る恐る宮野さんを呼んだ。
「えっ……あ、はい、お願い致します!」
我に返った宮野さんは恥ずかしそうに下を向いた。こんな宮野さんを初めて見た。
「もしよろしければ来月からメンテナンスを月2回に致しますか?」
口を開いたのは椎名さんだ。
「本来この種類は室内でも比較的強いものなんですが、先月も枯れてしまったということですと、エアコンの風が当たるなどで条件も変わってきてしまうので、2週間毎にお手入れさせて頂きますが」
「はい、お願い致します!」
椎名さんの提案に宮野さんは即答してしまう。
「あ、あの……ご請求額のこともありますので、総務部長と一度相談させてください……」