落ちる恋あれば拾う恋だってある

メンテナンスの件を相談すると部長からあっさり許可が下りてしまい、結局観葉植物のメンテナンスは毎月2回になった。今後最低でも月に2回は椎名さんと顔を会わせることになってしまう。あの合コンの直後では気まずくて仕方がない。

「失礼致します」

男性の声に振り向きフロアの入り口を見ると椎名さんが立っていた。私は引き出しから印鑑を出すと椎名さんのところまでゆっくりと歩いた。

「終わりましたのでサインお願いします」

「はい」

私は納品書に記載されたフロアとそれぞれの観葉鉢の数を確認し、右下に押印した。

「来月からメンテナンスは2回でお願いします」

「かしこまりました」

「ご苦労様でした」

「夏帆ちゃん一つ教えてあげる」

椎名さんは私にだけ聞こえるように顔を近づけた。合コンの夜を思い出してドキッとする。

「さっきの役員フロアの観葉鉢だけど、多分水のあげすぎで枯れるんだよ」

「え?」

言われた意味が分からなくて椎名さんの顔を見た。至近距離で目が合ってしまい、慌てて目を逸らした。椎名さんに耳元でふっと笑われ顔が赤くなる。

「あの宮野さんって人、植物が好きなんだって。ほぼ毎日自分でも水をあげてくれるらしいんだけど、俺たちは大体次のメンテまで持つように水の量を調節してるんだ。だから毎日あげる必要はない。あげすぎるから逆に枯れるんだよ」

「そうなんですか……」

なんだ、宮野さんが自分で枯らせてるんじゃないか。先月だって枯れたのはきっとそのせい。

「その事は宮野さんに言って頂けました?」

「毎日あげる必要はないとは言ったよ。水をあげるから枯れるんですなんて、置いてもらってるこっちは言えないし」

「メンテナンスを2回もやる必要がないとは?」

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