仇打ち
橋本
橋本頼人は悩んでいた。止めるべきだろうか。魂霊神社に居るのは幽霊だと聞いていたが、頼人はそうではない気がしていた。
連続通り魔事件は昔といっても10年前だ。10年前、頼人が7才のとき、母は連続通り魔に殺された。あまり詳しいことは聞かされていなかったのだが、高校生になって、もう大人だからと事件の詳しい話を父から聞いた。
父は泣きながら話した。母は、全身を滅多刺しにされた、無惨な状態で発見されたと聞いた。
なすすべなく体中を刃物で貫かれる母の姿を想像しようとすると、頼人は吐き気を催した。
気分が落ち着いてからも事件当時の詳しい状況や警察の対応などたくさんのことを父は話した。
中途、父は涙で頬を濡らし、涙声になりながらも、最後まで語ってくれた。
そして最後に、父は重要なことを告げた。
ー犯人はまだ捕まっていない。
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