軍平記〜その男、村政〜



「そ、総司様。体は大丈夫ですか。」

たえが総司に聞く。

「あ、ああ。わしの為に済まない・・・。」


二人は五重塔の一番上の室内に居た。

縛られる訳でもなく、ただ無造作に閉じ込められていた。
室内には強力な結界が張られ、表に出る事が出来ない。

総司の体は回復してはいない。たえも飲まず食わずで総司に付き添っていた。

二人はもはや限界だったが、村政の到着に一途の望みを託し、待っていた。


マサムネは塔の屋根で眠っている。
あぐらをかいたまま、目を閉じ、考え込むように。


その日の昼過ぎ、村政は羽黒五重塔に到着した。

マサムネは待っていたかのように塔から降りてきた。


−来たか、その方。お前はわしが殺す。それから七本国を滅ぼす。
そして、最後に伊達総司を殺し、わが本懐を遂げる。―


マサムネが村政に言う。

「マサムネよ。あんたは過去の遺物だ。呪術により命を吹き込まれ、その魂はすでに失われた。」
「それでも破壊の為に蘇り、現世に災厄をもたらし、わが兄弟と友の身柄をさらい、恩人の命を奪った。」

マサムネは聞いている。

「マサムネよ。俺は貴様を封印する。どんな手段を使ってもだ。」


―ふふ。面白い。どれ程わしを楽しませてくれるか。―


対峙する二人。


最後の戦いが始まる。
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