蟲狩り少女
「お母さん?」


キッチンも真っ暗で、あたしは電気をつけながら声をかけた。


明るく照らしだされるキッチンに、お母さんの姿はない。


ただ、少し前に作ったのだろう晩ご飯のハンバーグがテーブルに置いてある。


でも、それは1人分だった。


どうしたんだろう?


あたしは不安を抱えつつキッチンを出て、廊下を挟んだ寝室のドアをノックした。


コンコンと、木を叩く軽い音が響く。


「お母さん、寝ているの?」


そう声をかけるけれど返事はない。


少し迷った末、あたしはそのドアノブに手をかけた。


鍵のないドアはすんなり開く。


「お母さん……?」


全部開ききってないドアの隙間からそっと声をかける。
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